ここの写真を初めて撮ったのが2013年の1月だから7年越し。”やっと”泊まりに行きました。
やっとになった理由。
- 直前の予約が困難
- 自分の旅行体系として2食付きしか”ない”旅館が好きではない
- 宿泊料を調べたら「普通の旅館」だった
と、この7年の間伊香保に何度も来ていて泊まらなかったのは、泊まろうと思っても前日や当日の検索では結果に出てこなくて予約出来ず、もし素泊まりがあればもっとあっさり泊まっていたと思いますけれど、2食付きの旅館の料金としてはどっちつかずの中途半端で微妙な、当たりハズレがはっきりと分かれる価格帯のため「大きく二の足を踏んでしまってた」というのが正直なとこ。
ただいざ予約を入れ調べてわかった事で、1と2については予約サイトを見るのが好きな人だとハマりやすい罠だと思うんですが、銀山温泉の旅館と同様公式ホームページからの予約となるとかなり柔軟で、泊まりたかった西棟と常磐苑は当日の14時まで素泊まりでの予約も可能な状態でありました。
まずは食事から。
チェックインで小奇麗なとこに案内されたんですがそこはダイニングで、書くにあたり調べてみたら部屋食よりもそのダイニングで食事をするプランの方が1000円高い設定でしたので、ダイニングでの食事の方に力を入れてるんでしょう。
自分の選択は断然気楽な部屋食です。
正直あまり華美ではない、宿泊料金から考えて「これくらいは」と思う程度の料理。ただどこぞの旅館と比べればがんばっているように感じました。
はっきりと美味しかったのは嶺岡豆腐くらい(上の写真の左上)。
部屋食の欠点として、もちろん最大限気を使ってくれてはいるでしょうが、どうしても焼き物他、部屋で火をつける鍋以外の料理は間が悪いと全て冷めてしまってから配膳される可能性があって、それは宿泊客が多ければ多いほど運と言いますかどうしようもないところ。
ダイニングは一品だしと書いてあったので、そういう面ではこういう食事を出来立ての状態で食べたいのであれば、時間がかかったとしてもダイニングでの食事を選択した方が良いという事での差額なんでしょう。
鍋の鶏は普通にウマかったですし、こういう食事がキライなわけではなく、とにかく献立を見た時点でワクワク出来ないというのに不満なだけで、献立からある程度味の想像がついてしまっている状態で待っているわけですが、いざ料理が運ばれてきて目にしたものに驚きがないとやはりときめけず。
あと常々思っていることですが、「連泊」客のことを考えて作ってる献立じゃないんだろなーっていう旅館が多すぎだと感じます。
実際の需要がそう(1泊2日の宿泊客が多い)で仕方のないことと理解はしてるんですけど、いい宿へは基本2泊から考えるようにしてるため自分で選択肢を狭めてるジレンマがあります。
写真は撮りませんでしたがデザートは普通。
マティーニグラスのようなのにプリンとりんごがのっていました。
朝食は上等。ホントこれくらいの朝食が丁度良い。
味噌汁は固形燃料で温めるようになってまして、おいしすぎておかわりが欲しかった。
次、風呂。
木造の本館に風呂付の部屋はなく(別館の部屋にはあります)、月光と折鶴という大浴場が時間によって男女切り替わり、それと先着順ですが空いていれば何度でも利用可能な無料の貸切家族風呂が3つ(毎時ちょうどからの50分間)。
どの風呂も源泉そばの露天風呂と同じ黄金の湯の掛け流しで、露天風呂がないのが残念と言えばそのとおりなんですが、貸切風呂が3つもあって無料というのはかなり良くてありがたい。
脱衣所に水筒が置いてあり冷水が飲めるようになってましたが、大したことじゃないけれどこういう心遣いがあると気分はとても上向く。
到着後月光、朝に折鶴とどちらへも入ってみての感想ですが、月光の方が広く開放的と感じたんですが、なぜか狭めの折鶴の方が気に入りました。窓の向こう側の差か、雰囲気が良い。
貸切風呂は時間になると部屋へ電話がかかってきて、鍵を受け取りにフロントへ行き案内される~という方式で、夕食後と朝食前に弐と壱を利用しましたが、どちらも4人は入れる広さ。18時~19時の夕食前で考える人が多いようなので、そこらがいい人は予約後速やかに電話して押さえるべきでしょうね。
そして期待はしなくとも一番大事な部屋ですが、宿泊料金が一番安いのは玄関に向かって立っての右手側(上の写真、横手館と書かれた照明のある側)、歴史そのままの本館西棟。
部屋に風呂トイレ洗面等の水回りは一切なく、暖房はあるけれど冷房なし。今回泊まったのがこちら。
次に安いのが繋がってはいるものの後になって増築したと思われる(今は使われていないフロント、ロビーや玄関が裏手にあった)別館常磐苑の部屋で、こちらは部屋に風呂トイレはついていて、冷房もアリ。
一番高く設定されているのが10年前(平成22年)に改装された本館の東棟で、トイレ洗面冷暖房があって風呂だけない部屋。
高いと言っても西棟の部屋との差額は2名で税込み4400~8800円程度。
この東棟をちょっと覗かせてもらった感想としては「実に綺麗(当たり前)なんだけど味気ない」で、こういう部屋に泊まりたいのであれば他の旅館の方がいいはず。
外から見た感じ結構大きい旅館と思っていたんですが、実際広い(東西に長い)は広いんですが、総部屋数は40とそれほど大きい旅館ではありません(一昨年泊まった森秋旅館は80室でしたし、敷地が桁違いに広いホテル小暮は111室)。
西棟以外で「この旅館に泊まりたい」理由が見当たらない中、旅館全体で一番泊まりたかった「西棟の中で一番良いと思える」部屋を割り当ててもらう。
3階西棟側の角部屋「あららぎ」。
他のどの部屋とも違い、部屋の中に広縁までの縁側があるのが特長。
ちなみに下の2階の部屋は「老松」で、上の4階は「小督」です。
大工だったという曾おじいの子のおじいが(生まれる前に他界)こういう小洒落た造りの家を持っていた事が幼い頃の記憶としてあったせいでふと懐かしく感じてそれを思い出したんですが、部屋の居心地とは関係のない部分ですし、部屋に居て眺めて過ごすというわけでもないですから、どちらかと言えば無意味なものだと思ってるんですけど、惹かれるのってこういう余分なもので贅沢っていうのはこういう事ですよね。
今がとてつもなく便利になってしまっているので、古い建物、部屋ではなにかと不便に感じる部分は多いですけれど、それを我慢出来る良さがある。
反面へやはとっても普通。
とはいっても凝ってる部分はあちこちに見られ、ビリヤードのキューが好きなので銘木や寄木細工だとかの木工は大好きで、建具の組子の凝り具合なんかには自然と目が行きましたが、興味ない人にはただの和室ですよね。
こんな凝った造りの部屋なのにところどころ手入れが行き届いてない部分も目についてしまい、それはすごく残念。
目の前が金太夫(旅館)の裏側で眺めはないに等しく、横手館より奥には何もないため人通りはほとんどなくて、「不満」ではないんですがその無さがただただ残念で、広縁の椅子に座って日向ぼっこしてるとかなり暇で静寂すら感じます。
同じような広縁があるのなら向かいの東棟の部屋からのが「眺め」はマシでしょう。
ここ伊香保温泉で「何かしよう」と思って行ってはないんですが、これぞ正しき温泉旅館での過ごし方と言わんばかりに風呂へ入る以外することがない。
草津みたいな広い温泉街じゃないので行けば行くほど無目的にウロつくことはなくなって、今じゃ石段沿いの店はほぼ素通りですし、かといって岩手の温泉くらい何もないわけじゃないので完全に籠ろうって気でもまだ行けてない。
寝転がろうと思ったら押し入れにも布団がなく勝手に敷くことが出来なくて、それが不便と言ったら不便でした。畳に座布団枕で寝そべりましたが。
反対に便利かなと驚いたのはエレベーターがあったこと。
3階まででしたが(西棟は4階まである)こういう旅館だろうと必要に迫られてなんでしょうね。
西棟の部屋からは遠回りになるのも理由ですが、自分にとっては木造建築に泊まりに来てるのに風情がなくなるというか、雰囲気が崩れるため部屋への案内時に一度使ったっきりで、部屋前にある階段使ってました。
さほど寒くなかったせいか、トイレは部屋になくても気になりません。
部屋のホント目の前が洗面だったので、部屋から出る必要こそありましたが、仮に部屋内にあったとしても洗面までの歩く歩数的にそんな変わりはない近さだと思えてた程目の前だったので、特に不便さは感じてませんでしたね。家でもこれくらいの距離離れてるし。
部屋の冷蔵庫内の顔ぶれがすごく好印象で珍しく撮影(笑。
瓶の飲み物ってなんかいいですよねー。
コーラやウーロン茶なんかガラスの瓶で飲む方がおいしいと思っている派でして、風呂上りのポカリもオロナミンCも最高にウマいし、この選択最高。
館内にはソフトドリンクの自販機があります。
大浴場手前には牛乳系の自販機もあって持ち込みせずとも十分でしょう。
値段也のいい旅館だったという感想です。
ただ一方で部屋、食事、サービスなど様々な面で物足りなく思う人も少なくはないだろうなというのも正直なとこで、それは館内を探検していた時に思った「もうピークを終えてしまった旅館」という見立てがしっくりくるかなと思いました。
と言うのも、広間(宴会場)はもう長いこと使われていないようでしたし、新館に当たる別館常磐苑の屋上には足湯プールやマッサージチェアがあったんですが、それらの案内はありませんでしたし、こちらも写真の通り長い間使われてないのは歴然で、こんないい眺めのある場所があるのにカビ臭く放置されてるなんて哀しさを感じました。
これを仕方なく思えるのは伊香保においてもここはけっして「高い旅館」ではないという事実からだと思います。
そのシワ寄せはサービス面でも現れていて、例えばチェックイン。
他の客らと到着がかぶってしまい仲居さんが全員出払っていた、という状況だったらわかるんですが、そうではないのに何のためにあそこ(ダイニング)まで連れて行かれ待たされ宿帳に記入をする必要があるのか理解出来なかった。その時出されたシイタケ茶はとても美味だったんですけども。
「食堂の場所を知る必要のない」部屋食を選んでた自分にとっては、食堂への案内は必要ありませんので、玄関からそのまま自分の泊まる部屋へ案内してもらってそこでゆっくりそのお茶でも飲みながら記帳させてくれる方が所謂高級旅館のソレで、1秒でも早く部屋に入れるのは客としてありがたいことなんですから、そうする場合と比べ、宿側の人手に、手間、客にかける時間てそうは変わらないんじゃない?なのになんでなんだろ???って思っていました。
玄関からその食堂までの案内が女将というわけでもなかったですしね。
ちなみに接客すべて仲居さん。女将らしき人の姿を見たのは最後会計時の帳場でのみ、て(笑。
ま、そーゆー感じだから(館内あちこち)あーゆー感じなんだな、と最後の最後で納得。
金勘定にしか女将が現れないようではそら細かいとこなんかにまで気も手も行き届きませんわ。
7年前の投稿の時は吉田屋旅館に泊まっていて、真冬の大雪に出くわしたのもあって石段周辺の徘徊のみで、目にした旅館は石段沿いのばかり。
石段沿いでは下の方の千明仁泉亭が別格な佇まいで、次点に木造四階建ての迫力か歴史を感じさせられたここ横手館という感じで、特に暗くなっての雰囲気には抜群のものがありました。
その後何度か伊香保を訪れ知ってくるんですが、伊香保温泉での高い旅館というのは、千明仁泉亭(34室)、古久家(39室)、ホテル小暮(111室)に、別館タイプの福一別館諧暢楼(8室)、塚越屋七兵衛別館香雲館(10室)、かのうや別邸そらの庭(9室)、ら辺。
この6つからだと今後泊まる可能性があるのは、別館タイプは好みでないため、千明仁泉亭、古久家、ホテル小暮になると思うんですが、食べたいと希望してない食事のために高くなってしまう旅館に泊まるのはいつになることやら。それくらい伊香保の食は少ないながらも最低限充実してる方だと思ってます。